自宅から250km離れた瀬戸内海の島に、約100坪の畑があります。
10年ほど放置されていたこの土地を、自然農法的なアプローチで野菜が育てられる状態にできるのか。そして、1〜2ヶ月に1回・1週間程度の滞在という制約の中で、継続できるのか。このシリーズは、その検証の記録です。
なぜ畑を始めようと思ったのか
父が亡くなって4年が経ちました。島にある父の実家は、その後誰も住まずにいます。敷地内には、かつて畑として使われていた土地がそのまま残っていました。草が生い茂り、ツタ系の植物が根を張り巡らせ、見た目はほぼ荒れ地です。
ただ、この土地には条件が揃っていました。瀬戸内海の温暖な気候、ほぼ一日中日が当たる向き、水はけの良い土質、そして敷地内に井戸があります。使っていない土地としては、かなり恵まれた環境です。
もう一つ、現実的な理由があります。空き家の管理です。
定期的に訪れる理由がなければ、家はどんどん傷んでいきます。雨漏りが起きても、害虫が入り込んでも、誰も気づかない。そうなる前に、足を運ぶ仕組みが必要でした。畑を始めれば、野菜の世話という理由ができます。畑の管理と家の管理を同時にやれる。現実的な一石二鳥です。
農業経験は、二人ともゼロです。そして自宅から250kmという距離。この条件を前にして、普通の家庭菜園的なアプローチが通じるとは思いませんでした。
頻繁に水やりに来られない。追肥のタイミングで島に渡れない。そういう制約があるなら、人の手を最小限にして自然のリズムに任せる農法のほうが、むしろ理にかなっているのではないか。そう考えて、自然農法的なアプローチを選ぶことにしました。
「自然農法なら留守でも大丈夫」という見立てが正しいかどうかは、やってみないとわかりません。
2025年10月、最初の草刈り
プロジェクトの始動として、まず草刈りと邪魔な木の伐採を行いました。電動草刈り機で地表の草を一掃し、土地の輪郭を把握できる状態にします。

草を刈り終えた状態がこれです。地下茎が地面を覆っていますが、ようやく土地の広さが把握できるようになりました。左に見えているのは古い容器と錆びた鉄骨の残骸で、片付けるものがまだ相当あります。
作業途中の様子は動画でも撮影しています。
畑の現状(2026年2月時点)
草刈り後の状態を整理しておきます。
広さは約100坪で、実測はこれからです。日当たりは、半分のエリアがほぼ一日中日が当たり、残り半分が昼から日が当たります。水源は敷地内の井戸ですが、ポンプが故障中で要交換です。宿泊場所にしている実家は畑のすぐ横にあります。
問題は複数あります。ツタ系の植物の地下茎が畑全体に蔓延していること、バラが各所に植えられていてトゲに悩まされること、そしてイノシシが生息していること。どれも簡単には解決しない問題です。
土の状態は、見た目は茶色で通常の畑という感じです。水はけは良く、雨の後も水溜まりができません。pH値など詳細は土壌測定器で確認する予定です。
宿泊場所にしている実家も、現在床の改修工事を進めています。畑だけでなく、家の整備も同時に進んでいます。島に来るたびに、やることは増えていきます。
目指すもの:段階的に自然農法へ
完全な自然農法、つまり不耕起・無肥料・無農薬を初年度から目指すのは現実的ではないと判断しました。土の状態もわからない段階で、いきなり「自然に任せる」のはただの放置です。まず野菜が育つ土台を作ることが先です。
初年度は無農薬有機栽培から始めます。化学農薬は使わず、肥料は有機肥料のみ。耕起はします。マルチは使わず草マルチを試します。
2〜3年目で準自然農法に移行します。不耕起を基本とし、堆肥の投入も初年度のみ、以降は無施肥で草マルチを本格的に活用していく方向です。
長期的な目標は、一切の資材を使わない完全自然農法です。自家採種まで視野に入れています。ただしこれは、あくまで今の時点での考えです。実際に土と向き合いながら、修正を重ねていくことになると思っています。
初年度の計画
100坪全てをいきなり始めるのは無謀です。まず小さく始めます。
春から夏にかけては、家のすぐ上にある中段の畑(約5〜6坪)と、上段の一部(約20坪)の合計26坪程度からのスタートです。
育てたい野菜は、ホウレンソウ・小松菜・レタスなどの葉物と、ジャガイモ・サツマイモ・タマネギ・カボチャなどの保存がきく野菜を中心に考えています。遠隔地という性質上、収穫後に長期保存できる野菜を中心に据えました。収穫した翌日に食べられる状況ではないので、保存性は外せない条件です。
課題は山積みです。地下茎の処理をどうするか。井戸ポンプを修理して水をどう確保するか。イノシシをどう防ぐか。そして留守中の畑をどう保つか。一つひとつ、その場で対処していくしかありません。事前に全部解決してから始めようとすると、永遠に始まりません。
このシリーズについて
成功も失敗も記録します。農業未経験者が遠隔地で自然農法的なアプローチを試みた場合、何が起きるのか。その記録が、同じような状況の方——遠隔地に土地を持つ方、空き家管理に悩む方、自然農法に関心がある方——の参考になるなら、それで十分です。
次回は2月下旬の滞在から、畑の実測と初めての畝づくりをレポートします。
ではまた。
