はじめに
日本神話の中でも特に印象的な神として知られるスサノオノミコト(須佐之男命)。荒々しい性格で知られる一方、ヤマタノオロチを退治した英雄としても語り継がれる神様を祀る須佐神社は、全国各地に点在しています。その中でも特に有名なのが島根県出雲市にある須佐神社です。この神秘的な聖地には古くから語り継がれる「七不思議」があり、多くの参拝者を魅了し続けています。
スサノオノミコトという神格
須佐神社を語る前に、まずは御祭神であるスサノオノミコトについて理解を深めましょう。諸説ありますが、古事記や日本書紀によると、スサノオは伊邪那岐命(イザナギノミコト)の子として生まれ、天照大御神(アマテラスオオミカミ)、月読命(ツクヨミノミコト)と共に三貴子の一柱とされています。
スサノオの性格は複雑で多面的です。天上界では乱暴を働いて姉の天照大御神を岩戸に隠れさせる原因を作る一方、出雲の地では稲田姫を救うためにヤマタノオロチという恐ろしい大蛇を退治する英雄的な活躍を見せます。この二面性こそが、スサノオという神の魅力であり、多くの人々に愛され続ける理由でもあります。


島根県出雲市の須佐神社 – スサノオ終焉の地
全国にある須佐神社の中でも、最も重要とされるのが島根県出雲市佐田町須佐にある須佐神社です。この神社は「日本で唯一のスサノオの御魂を祀る神社」として知られ、スサノオが最後に鎮まった地とされています。
神社の歴史と由来
須佐神社の創建は古く、社伝によると出雲国風土記に「この国は小さいけれ共良い国なり、我名を岩木にはつけず土地につける」と仰せられ、スサノオがヤマタノオロチを退治した後、各地を巡って最終的にこの地に「吾が神魂はこの地に留まらん」と言って鎮座されたという伝説があります。この言葉から「須佐」という地名も生まれたとされています。須佐神社の宮司家は連綿と続き現当主は第七十九代宮司 須佐健央氏です。
須佐神社の境内には、スサノオが実際に住んだとされる「御本殿裏の森」があり、ここは古来より神域として大切に保護されてきました。樹齢数百年を超える巨木が立ち並ぶこの森は、まさに神が宿る聖域としての雰囲気を醸し出しています。
須佐神社に伝わる七不思議

島根県出雲市の須佐神社の境内周辺には「七不思議」なる伝説があります。これらの不思議な現象や言い伝えは、神社の神秘性をさらに高め、多くの参拝者を魅了し続けています。
本殿裏にそびえる樹齢1300年以上の巨大な杉の木。この大杉は、スサノオの御神威が宿るとされ、触れることで不思議な力を感じる人が多いと言われています。また、この杉は台風や落雷などの災害を受けても決して倒れることがなく、神の加護を受けていると信じられています。

1. 塩井(しおのい)
境内にある古い井戸で、海から遠く離れた山間部にありながら、日本海に続き満潮の時は附近の地面に潮の花をふく。この井戸の水は僅かに塩味がするという不思議な現象があります。昔からこの水は清めの水として使われ、特別な霊験があるとされています。
2. 相生の松(あいおいのまつ)
境内にある二本の松の木が根元で結ばれている神木です。この松は夫婦和合や縁結びの象徴とされ、スサノオと稲田姫の永遠の愛を表しているとされています。この松の前で愛を誓ったカップルは永遠に結ばれるという言い伝えがあります。今は枯れ、かわりを植えている。
3. 神馬(しんめ)
神社には馬を奉献するを常とし、この馬は後必ず白馬に変り異常をよく予知せりという。今はなし。
4. 落ち葉の槇(おちばのまき)
槇 (柏) の葉に松葉で通した孔がある槇の喬木。そのかみ、稲田姫が、於呂志古山 (産子山誕生山) でお産をなさった時、産具を柏葉で包み松の葉で綴じ流瀬川にお流しになり、それが現在の位置にとどまり川畔に繁茂して今日に至るという。この古事が後世、須佐神社の神紋「蔓柏」となったもので蔓は松葉を文様化したもの。従って須佐家の家紋の起源でもある。
5. 影無桜 (かげなしさくら)
昔隠岐国で耕田が稔らず不作が続いた。知々井の某に夢想があり「須佐大宮の境内に大きい桜が繁茂して、それが隠岐へ影をさす為に耕作が出来ぬ。早く出雲へ渡って須佐の国造に頼んでその桜を切ればよい」とのことであった。そこでその桜を切ったのであるが、その株から芽を出してやっと花が咲くようになると枯れ、又芽が出るというようになって今日に至る。これは五穀豊饒の祈祷のことをいったものか。
6. 星滑 (ほしなめら)
須佐の中山の嶺のあたりに岩石の露出して谷の様になっている所に白い斑点がある。(神社の西方)
それが豊年なれば多く、凶年なれば少ない。
7. 雨壺 (あまつぼ)
神社の西を流れる素鵝川に沿って、約一粁下流の田の中に大きな岩があり、その中に径二尺 (七十センチ) 余の芝生がある。これを犯せば須佐大神の怒りにふれて洪水が出るといわれている。現に之を犯して翌日暴風雨となり洪水が出て村民の怒りをかい村から追放された事実もある。
建築的特徴と見どころ

須佐神社の本殿は、出雲大社と同じ大社造りの建築様式を採用しています。しかし、出雲大社よりもコンパクトな造りとなっており、より親しみやすい印象を与えます。屋根の千木は男神を表す垂直切り、鰹木は奇数本が配置されており、これもスサノオという男神を祀ることを示しています。
拝殿や神楽殿なども歴史を感じさせる立派な建物で、特に神楽殿では今でも定期的に神楽が奉納され、地域の文化的拠点としても機能しています。境内社として祀られている稲田神社(稲田姫を祀る)も併せて参拝することで、スサノオと稲田姫の神話的な結びつきを感じることができます。
現代における須佐神社の意義
現代社会において、須佐神社は単なる観光地ではなく、深い精神的意義を持つ場所として注目されています。近年、須佐神社は強力なパワースポットとして多くの参拝者を集めています。特に本殿裏の大杉に触れることで、スサノオの強いエネルギーを感じることができるとされ、全国から多くの人々が訪れます。
商売繁盛、厄除け、良縁、開運、交通安全などの御利益があるとされ、特に人生の転機や困難に直面している人々が訪れることが多いようです。スサノオの持つ破壊と創造、試練を乗り越える力強さが、現代人の心の支えとなっているのでしょう。
須佐神社は地域文化の継承においても重要な役割を果たしています。毎年4月19日に開催される「陵王舞 (りょうおうのまい)」、特に令和7年度は「令和のご遷宮」須佐神社假殿遷座祭が斎行されました。また、8月15日に開催される切明神事 (きりあけしんじ)「島根県無形文化財の指定を受く念佛踊り」など伝統的な神楽や舞踊が奉納され、古代から続く信仰と文化を現代に伝える貴重な機会となっています。
祈願を受ける時の姿勢について(参考)
1、 正座が基本です。
胡坐 (あぐら) などは論外、不遜な態度といえます。
祈りの言葉が神様に通じる姿勢を保ちます。
2、 脚に病があるなど事情がある場合は、神職に事情を話しその指示に従います。
・清祓を受ける時、奉幣・お神楽を受ける時
神職が皆様に向かって軽くお辞儀をすると同時に両手の掌を床に着け、45 度程のお辞儀として終わるまでその姿勢を保ちます。
・祝詞奉上の時
祝詞奉上が始まると同時に両手の掌を床に着け 60 度程のお辞儀をして、祝詞が終わるまでその姿勢を保ちます。
神職は一所懸命に心を尽くして真摯に奉仕しています。
祈りの言葉が神様にお聞きいただけるような態度・姿勢で祈願を受けましょう。
まとめ
須佐神社は、日本神話の世界を現代に伝える貴重な文化遺産であり、古くから語り継がれる七不思議によってその神秘性がさらに高められています。神社がただの歴史的建造物ではなく、今もなお生きた信仰の場であることを物語っています。
スサノオという神が示す「試練を乗り越える力」と「愛する者を守る勇気」は、現代を生きる私たちにとっても変わらず大切な価値であり続けています。須佐神社を訪れることで、私たちは古代から現代まで続く日本人の精神的な営みに触れ、自分自身と向き合う貴重な機会を得ることができるのです。
🏛️ 須佐神社 アクセス情報
📍 基本情報
🏯正確な場所はこちら
プラスコード:6PMP+VQ 出雲市, 日本、島根県
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📝 参拝時のご注意
- カーナビ設定:「島根県出雲市佐田町須佐730」または電話番号「0853-84-0605」で検索
- 山間部のため:冬季は積雪・凍結の可能性があります。スタッドレスタイヤやチェーンの準備をお勧めします
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