道の駅サラブレッドロード新冠を出て、次に向かったのが「太陽の森 ディマシオ美術館」です。近づくにつれ、道路沿いに派手なのぼりが目に飛び込んできます。「ギネス世界記録認定!世界最大の油彩画」——サラブレッドの産地として知られる日高に、こんな本格的な美術館があるとは正直まったく想定していませんでした。
太陽の森 ディマシオ美術館とは
正式名称は「太陽の森 ディマシオ美術館(Di-Maccio Art Museum, The Forest of Taiyo)」。北海道新冠町にある、フランス人幻想絵画家ジェラール・ディマシオの作品を中心に展示する美術館です。
ユニークなのはその成り立ちです。2008年に廃校となった旧・太陽小学校を再利用し、2010年に美術館としてオープンしました。校舎の広さを活かして、通常の美術館では物理的に展示不可能な超大作を収蔵することが実現したのです。
入口に近づくと、等身大の人形やチンパンジーのオブジェが出迎えてくれます。警備員の人形が座っていたり、ベンチに誰かが寝そべっていたり——最初はギョッとしますが、これも演出のひとつ。「恐竜の森」には本物さながらのブラキオサウルスとゴリラが並び、記念撮影スポットとして人気です。外観からすでに、普通の美術館ではないことが伝わってきます。


世界最大の油彩画、その迫力


館内の目玉は何といっても、ギネス世界記録に認定された「世界最大の油彩画」です。
作品名は「追想された未来」。フランス人画家ジェラール・ディマシオが1993年から1997年の4年をかけて制作した超大作で、サイズはなんと縦9m×横27m。さらに天井・床・両壁を鏡張りにした専用展示室(高さ9m×幅27m×奥行き3.5m)に設置されており、鏡の反射で絵が無限に広がって見えます。
1997年にチュニジア政府の要請でカルタゴ大聖堂にて初公開されましたが、その後は長らく非公開となっていた「幻の作品」でした。そのサイズゆえに既存の日本の美術館では展示できず、廃校を転用したこの施設だからこそ実現した展示です。
実際に目の前に立つと、その迫力に言葉を失います。幻想的な人物・建築・生命体が複雑に絡み合う構図は、近くで見るとまた遠くで見るとまた違う表情を見せてくれます。ひとりの人間が4年かけて描いたという事実が、にわかには信じられないほどのスケールです。
1日8回開催される「光と音の演出プログラム」は、ぜひ合わせて体験してください。照明と音楽が絵画に重なり合うことで、絵そのものが呼吸しているかのような感覚を覚えます。実際に体験しましたが、これは見る価値がありました。
ギネス世界記録の公式認定は2024年11月14日。私たちが訪れた時期はちょうど認定直後で、入口にはギネスのバナーが何本も並んでいました。


ディマシオ作品と多彩なコレクション
メインの大作以外にも、ディマシオの油彩画・パステル画・デッサンが200点以上展示されています。ディマシオの作風は「幻想絵画」と呼ばれるジャンルで、異形の生命体・神話的な人物・宇宙的な空間が混在した独特の世界観が特徴です。好みが分かれる絵柄ではありますが、技術の高さは一目見ればわかります。
旧プールを転用した「ルネ・ラリック ガラスの美術館」も見どころのひとつ。彫刻庭園には羊の群れやモダンな彫刻が点在し、屋外でも十分楽しめます。

率直な感想
滞在時間は約2時間。じっくり回るにはちょうどいい規模感です。入館料は大人1,800円(税込)。正直、ギネス記録がなければ「ちょっと高いかな」と感じる価格設定です。しかし世界最大の油彩画+光と音のプログラム+ルネ・ラリック館+広大な庭園が全部込みと考えれば、内容的には見合っていると思います。


太陽の森 ディマシオ美術館 基本情報
- 所在地: 北海道新冠郡新冠町中央町東1番地
- 開館時間: 10:00〜16:30
- 開館期間: 3月中旬〜12月中旬(木〜日・祝のみ、GW・夏休み・シルバーウィーク期間は無休)
- 入館料: 大人1,800円、高校・大学生900円、中学生500円、小学生以下無料(税込)
- 公式サイト: https://dimaccio-museum.jp/
✦ 特別編:JRA日高育成牧場・愛知ステーブル見学 ✦

~一般では立ち入れない競走馬育成の最前線へ~
ディマシオ美術館をあとにして向かったのが、北海道浦河町にあるJRA日高育成牧場です。実はこの訪問、通常の観光ルートでは決して実現しない、特別な機会でした。
JRA日高育成牧場とは
JRA日高育成牧場は、日本中央競馬会(JRA)が運営する競走馬の育成・生産施設です。イギリスのニューマーケット、フランスのシャンティイと並ぶ世界レベルの育成調教施設として知られ、敷地面積は約1,200ヘクタール——東京ドーム約250個分という広大なスケールです。
セリ市で購買した1歳馬を「JRA育成馬」として育成調教し、翌春のブリーズアップセールに上場・売却するという流れで、競走馬デビュー前の重要な育成期間を担っています。敷地の大半を占める調教施設は財団法人軽種馬育成調教センター(BTC)が運営を受託しており、民間の育成牧場も利用できる複合トレーニング施設として機能しています。


愛知ステーブル様のご厚意に感謝
今回の見学は、愛知ステーブル様のご厚意によるものです。愛知ステーブルは2006年に北海道浦河に設立された民間の競走馬育成牧場で、BTCまで徒歩1分という好立地を活かして1歳馬の馴致・2歳馬の育成を手がけています。石川県小松(2013年)、千葉県市原市(2017年)にも分場を開設し、全国規模で競走馬育成に携わっている会社です。
JRA日高育成牧場は一般公開されておらず、通常の観光では立ち入ることができません。関係者のご厚意なしには決して踏み込めない場所だけに、見学の機会をいただけたことには本当に感謝しかありません。

広大な敷地と調教施設の迫力



高台の展望スポットから見渡す風景は、圧巻のひと言でした。緑の牧草地と調教コースが山並みを背景に広がり、どこまでが敷地なのか見当もつかないほどのスケールです。
BTCの調教馬場には「追い越しは内側から」「月・水・金は左廻り、火・木・土は右廻り」という標識があります。左右の廻りを曜日で変えるのは馬の体への負担を均等にするためだそうで、競馬場と同じ感覚で本格的に管理・運用されていることが伝わってきました。
厩舎に入ると、サラブレッドの大きさに改めて圧倒されます。テレビや競馬場のスタンドから見ていた馬とは違い、間近で見るとその筋肉の張り・体高・目の輝きが全く別物です。育成段階の若馬たちがこの環境でどのように競走馬へと仕上がっていくのか——その過程の一端を垣間見た気がしました。
牧草地には風格ある大木が点在し、日高の山々を背景にした景色は北海道らしい雄大さそのものでした。


競馬の見え方が変わる体験
今回の見学を通じて、改めて日高という土地の特別さを実感しました。競馬場で馬券を買う側からすると、レースの結果だけに目が向きがちです。しかしその馬たちがどのような場所で生まれ、どのような環境で育てられているのかを知ると、競馬の見え方がまた変わってくる気がします。
一般の方がこの施設を訪れる機会は極めて限られていますが、日高エリアを走るだけでも牧場の風景は随所に広がっています。競走馬ファンなら、ぜひ一度この地を訪れてみてください。


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