ハイエースのスマートキーを海に落とした話|水深6mから回収、ボートとの二刀流キャンプ

今でこそハイエースで日本中を旅していますが、ボートを持っていた頃は、夏になるとハイエースとボートの「二刀流」で遊んでいました。

二刀流などと格好よく言っていますが、要するに陸と海から同時に目的地を目指す、少々ややこしい遊び方です。準備は倍、荷物も倍。それでも毎年懲りずに続けていたのは、それだけの価値があったからです。


まず、会議から始まる

出発前日は、まず「家族会議」です。

議題は「誰がボートで行って、誰がハイエースで行くか」。10人乗りのボートなので全員乗れるのですが、食材やBBQ道具、着替えといった大荷物はボートに積みたくない。かといってハイエースだけで行ったら、沖に出られない。

だから、二手に分かれます。

ボート組はマリーナから出港。釣り道具や浮き輪など、船の上で使うものを積み込んで、海から目的地の漁港を目指します。

ハイエース組は陸路で同じ漁港へ。こちらの積み荷は食材、クーラーボックス、BBQコンロ、炭、着替え、タオル……。要するに「かさばるもの全部」です。

同じ場所を目指して、陸と海から別々に出発する。なんだか大げさですが、これが我が家の夏の定番でした。


漁港の岸壁で合流する

目的地は、海水浴場の近くにある小さな漁港です。

ハイエース組が先に着いて、岸壁で待ちます。しばらくすると、沖から見慣れたポンコツボートが近づいてくる。岸壁に接岸した瞬間、「さぁ、始まるぞ」という気分になります。

ハイエースは岸壁に駐車、ボートは岸壁に係留。陸の相棒と海の相棒が並んだ光景は、我ながらなかなかいい絵でした。その時の写真が1枚だけ残っていて、見返すたびに「楽しかったなぁ」と思います。


昼間は沖でプライベートタイム

沖に停泊したボートの周りで、浮き輪につかまったり泳いだりして遊ぶ子どもたち
子どもたちがボートのデッキや浮き輪で沖のエメラルドグリーンの海を楽しんでいる様子

全員がボートに乗り移ったら、いよいよ沖へ。

岸壁の釣り人や海水浴場の人混みを横目に、ボートは沖へ向かいます。適当な場所でアンカーを降ろし、エンジンを止める。その瞬間、急に静かになります。聞こえるのは波の音と、遠くで賑わう海水浴場の声だけ。さっきまで自分たちもいた人混みが、もう別の世界のように感じられました。

子どもたちは待ちきれない様子で、デッキから次々と海へ飛び込んでいきます。浮き輪につかまってボートの周りを漂ったり、船体によじ登ってはまた飛び込んだり。何度繰り返しても飽きないその姿に、こちらまで夏を満喫している気分になりました。

大人はといえば、釣り糸を垂らしてみたり、デッキの日陰で潮風に吹かれながらうとうとしたり。デッキには、それぞれが思い思いに過ごしても窮屈にならない広さがありました。

「プライベートビーチ」ならぬ「プライベート海域」。お金では買えない贅沢だったと、今でも思います。


ハイエースのキーを海底に沈めた話

ひとつ、盛大にやらかした話をしなければなりません。

アンカーを降ろしたあと、効き具合を確かめようと、アンカーの真上まで泳いで見に行きました。その時、水着兼用のズボンのポケットにハイエースのキーが入っていたことなど、すっかり頭から抜けていました。透き通ったエメラルドグリーンの海に、子どもたちの笑い声。穏やかな夏の午後でした。

2時間ほど経った頃、ボートに上がってきた家族の一人が、何気なく言いました。「ねえ、いかりの近くに車のキーみたいなものが落ちてるよ」

その瞬間、頭の中でつながりました。水着のポケット。ハイエースのキー。アンカーの確認。

恐る恐るポケットに手を入れると……あるはずのものがない。

ヤバイ! 慌てて飛び込み、アンカーのところまで泳いでいくと、やはりありました。水深6mの白い砂の上に、ハイエースの電子キーがひっそりと横たわっています。水が澄んでいたから見えた。それがせめてもの救いでした。

スペアキーは自宅にしかありません。もし誰も気づかなければ、岸壁のハイエースには乗れないまま。二刀流キャンプが一転、洒落にならない事態になるところでした。

幸い、学生時代は水泳部でした。大きく息を吸い込んで、一気に6mを潜る。砂の上のキーをつかんだ瞬間の感触は、今でも手のひらに残っています。

それにしても、なぜ家族がキーに気づけたのか、今でも不思議です。広い海の底です。少しでも流されていたら見つけようがない。海が澄んでいて、たまたまアンカーの近くを泳いでいた家族がいて、たまたま下を覗き込み、たまたまそこが白い砂地だった。どれか一つでも欠けていたら、キーは今も6mの海底に眠っていたはずです。

あの夏の午後は、今でも神がかりだったと思っています。

水没したスマートキーにやったこと

キーの中まで海水が入っているだろうと思い、岸壁に戻るまで真水に漬けて塩抜きをしました。

岸壁に着いて、恐る恐るドアのロック解除ボタンを押す。……開きました。続けてエンジンスタート。……かかりました。2時間以上も海の底にあったのに、です。

その電子キーは、今も現役で使っています。ただ、スマートキーは本来、水に沈めることを想定したものではありません。今回は運が良かっただけだと思います。たまに「キーが見つかりません」と表示されるのは、あの日の後遺症かもしれません(笑)。

エメラルドグリーンの海でボートの周りを泳ぐ子どもたち、沖に停泊した穏やかな夏の光景

夜は岸壁で宴会モード

夜の岸壁でランタンの明かりの下、ハイエースとボートを並べてBBQを楽しむ家族の様子

日が落ちると、岸壁BBQの始まりです。

ハイエースから食材を降ろして炭を起こす。肉を焼き、昼間に魚が釣れていればそれも並べる。釣れなかった日は潔く肉だけです。暗くなった岸壁にランタンが灯り、その横にボートとハイエースが並んでいる。写真で見返すたびに、少し特別な気持ちになる光景です。

夜が更けると、大人たちは飲んで語り、子どもたちは昼間の疲れで一人、また一人と寝床へ。静かになった岸壁で、波の音を聞きながら飲むビールは、なんとも言えずうまいものでした。

寝床も二手に分かれます。ボートの船首ベッドで眠る「船中泊組」と、ハイエースで眠る「車中泊組」。揺れが好きな人はボートへ、苦手な人はハイエースへ。好きなほうを選べるのも、二刀流ならではの贅沢でした。


二刀流の贅沢さに、今頃気づく

陸はハイエース、海はボート。荷物の積み替えあり、二手に分かれての移動あり、キーを海底に沈めるハプニングあり。毎回てんやわんやでした。

でも今思えば、かなり贅沢な遊び方でした。陸の機動力と、海の自由。その両方を同時に使いこなしていた夏。子どもたちは大きくなり、ボートも手放した今では、もう再現できません。

今のハイエースは、あの頃の「陸の相棒」の後継です。相棒は一台になりましたが、旅への気持ちは変わっていません。

次回は、このボートで家族と通った釣りの話です。

ではまた。


ボート編

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