四国お遍路体験記:初心者が学んだ服装・作法・心構え

目次

はじめに

「お遍路って、どんな服装で行けばいいの?」「作法が分からなくて恥ずかしい思いをしたらどうしよう…」

お遍路を始める前の私も、まさにそんな不安でいっぱいでした。ネットで調べても情報がバラバラで、結局何が正解なのか分からない状態。そんな私が実際にお遍路を体験して学んだ、リアルな服装選びのポイントと参拝作法をお伝えします。

服装選び:理想と現実のギャップ

出発前の準備で悩んだこと

お遍路の服装について調べると、まず出てくるのが「正式な遍路装束」の情報。

正式な遍路装束一式:

  • 白衣(はくえ・びゃくえ)
  • 白ズボンまたは白袴
  • 菅笠(すげがさ)
  • 金剛杖(こんごうづえ)
  • 頭陀袋(ずだぶくろ)
  • 輪袈裟(わげさ)
  • 数珠
  • 脚絆(きゃはん)
  • 手甲(てっこう)
  • 持鈴(じれい)

「うわあ、これ全部揃えないといけないの?」と正直圧倒されました。費用もかかりそうだし、本当にこの格好で歩くの?と疑問に思ったのが本音です。でも、それなりの格好もしたい。

実際に選んだ「現実的な装い」

結局、私が最初の巡拝で選んだのは:

実際に持参したもの:(巡拝に必要なものは1番札所の霊山寺ですべて購入しました)

  • 白衣
  • Gパン
  • 菅笠(最初は野球帽でした)
  • 金剛杖
  • 数珠
  • 輪袈裟
  • ビニール製の頭陀袋
  • 歩きやすいトレッキングシューズ

選択理由: 白衣は絶対欲しかったけれど、袖ありの本格的なものではなく、袖の無いベストタイプにしました。下にはTシャツを着ていました。暑い季節だったのと、汗をかいても洗濯しやすいと思ったからです。数珠と金剛杖は「せっかくなら」という気持ちで購入。

用具

  • 経本
  • 納札(おさめふだ)
  • 線香・ローソク
  • ライター・マッチ
  • 納経帳

現地で感じた「装いの多様性」

実際に札所を回ってみて驚いたのは、参拝者の服装が本当に様々だったこと。

  • 完璧な白装束の方(少数派)
  • 白衣だけの方(多数派)
  • 普通の服装の方
  • 観光客風の軽装の方

「みんな違って、みんなOK」という雰囲気で、服装で浮くことは全くありませんでした。むしろ、地元の方々は温かい目で見守ってくださり、「よう来てくれました」と声をかけてくださることも。

季節による調整が重要だと実感

夏の巡拝で学んだのは、季節に応じた調整の大切さ。

夏の教訓:

  • 白衣の下に速乾性のインナーは必須
  • 菅笠は想像以上に重要(直射日光を防ぐ)
  • 汗拭きタオルは多めに
  • 水分補給用のドリンクボトルは大容量で

参拝作法:緊張の初回体験

作法を覚えるのに苦労した思い出

事前に調べた参拝の基本的な流れ:

  1. 山門での一礼 → 菅笠を脱いで合掌
  2. 手水舎で清める → 口をすすぎ、手を清める
  3. 鐘楼堂 → 参拝前に一度だけつく
  4. 本堂での参拝 → ローソク、線香(線香は中心から、ローソクは奥から立てる)納札、お賽銭、読経
  5. 大師堂での参拝 → 本堂と同じ作法
  6. 納経所 → 御朱印をいただく

頭では理解していても、実際の1番札所霊山寺では緊張でガチガチ。「あれ、線香は何本だっけ?」「納札はどこに入れるの?」と慌ててしまいました。

読経での失敗談

特に困ったのが読経。般若心経は練習していたものの、実際に声に出すとなると…

基本の読経順序:

合掌礼拝(合掌し三礼)

  1. 開経偈(かいきょうげ)一返唱和
  2. 般若心経 一巻唱和
  3. 御本尊真言(各札所で異なる) 三返唱和
  4. 光明真言 三返唱和
  5. 御宝号(「南無大師遍照金剛」を3回)
  6. 回向文 一返唱和

合掌一礼

初回は般若心経だけで精一杯。しかも小声でボソボソと…。隣で参拝していた年配の方の堂々とした読経を聞いて、「こんなに違うものか」と実感しました。

地元の方に教わった「心が大切」という教え

3番札所金泉寺で、読経に苦戦している私を見かねた地元のおじいさんが声をかけてくださいました。

「お経は完璧に覚えんでもええんよ。心を込めて『ありがとうございます』って気持ちが大事なんじゃ。弘法大師さんは、その気持ちを分かってくれる」

この言葉で、肩の力がスッと抜けました。それからは、覚えていない真言があっても焦らず、心を込めて般若心経を唱えることに集中しました。

実践を通して身についた「自分なりの作法」

5番札所目頃には慣れた手順

何回か参拝を重ねると、自然と手順が身につきました。

私なりに工夫したポイント:

  • 納札に事前に住所・名前を書いておく(現地で慌てない)
  • 小銭を事前に用意、想像以上に必要。(お賽銭など)
  • 他の参拝者の邪魔にならないよう、左右に寄る

意外と重要だった「道具の扱い方」

金剛杖の扱い方で最初は戸惑いました。

学んだ金剛杖のマナー:

  • 本堂・大師堂に上がる時は外に立てかける
  • 弘法大師の化身として大切に扱う
  • 宿では畳に直接置かず、タオルなどを敷く

菅笠も、風で飛ばないよう紐の調整が重要だと実感しました。

また、私は菅笠を脱ぐことを忘れる失敗を何度かしました。気を付けて。

参拝を重ねて変化した気持ち

最初は「ちゃんとできているか」ばかり気にしていた

1〜10番札所くらいまでは、「作法を間違えていないか」「服装は変じゃないか」ばかり気になっていました。でも回数を重ねるうちに、そんな心配はどうでもよくなってきます。

大切なのは「感謝の気持ち」だと実感

ある大きなお寺で、読経が終わり、本堂から出て一礼した(神社では鳥居の前で普通に行っている行為)のですが、お寺を管理されていると思われるご年配の女性から「本堂から出ていく際に礼をする人は滅多にいません。」と声を掛けられ、褒められました。自分自身、感謝の気持ちが現れたのだと感じました。珍しく、褒められたのですごく記憶に残っています。(褒められて伸びるタイプかも///)

20番札所を過ぎる頃には、作法よりも「今日も無事にお参りできました」という感謝の気持ちが自然と湧いてくるように。読経も、完璧でなくても心を込めて唱えられるようになりました。

同行二人(どうぎょうににん)の意味も、頭の理解から心の実感に変わった瞬間でした。

これからお遍路を始める方へのアドバイス

服装について

最低限あると良いもの:

  • 白衣(Tシャツタイプで十分)
  • 菅笠(日差し対策に本当に重要)
  • 数珠
  • 動きやすい服装と靴

なくても大丈夫:

  • 完璧な白装束
  • 高価な道具一式
  • 頭陀袋(普通のバッグで代用可)

作法について

すべて行う必要はないが必ず唱えたい

  • 般若心経(最重要)
  • 「南無大師遍照金剛」(なむだいしへんじょうこんごう)
  • 基本的な参拝の流れ

現地で学べること:

  • 各札所の細かい作法
  • 地域による違い
  • 他の参拝者から教わる工夫

最後に

お遍路を始める前は「正しくできるかな」と不安でしたが、実際に体験してみて感じたのは、お遍路は「完璧」を求める場所ではないということ。

むしろ、未熟な自分を受け入れ、感謝の気持ちを育む場所なのだと実感しました。服装や作法で迷っている方がいらしたら、まずは「やってみる」ことから始めてみてください。

きっと、机上の知識では得られない大切なことを、お遍路の道で学べるはずです。


次回は3回に分けて行った区切り打ちの体験をお伝えします。一番札所から印象深い札所まで、リアルな巡拝記録をお楽しみに!

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